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利益集団ってなに?圧力団体との違い・理論・分類までわかりやすく解説【政治学入門】

利益集団ってなに? 利益団体や圧力団体とはどう違うの?

この記事では、政治学で重要なテーマである利益集団について、理論と分類を含めてわかりやすく解説します。高校生・大学初学者・公務員試験対策にも役立ちます。

1. 利益集団の定義

まずは利益集団、利益団体、圧力団体がどういう意味なのか紹介します。

1-1. 利益集団

利益集団(interest group)とは、共通の利益を共有する人々の集まりです。 *1

利益集団は組織になっていなくてもかまいません。例えば、同じ商店街でお店をやっている人たちは、商店街にたくさんお客さんが来てくれることが共通の利益になるので、利益集団になります。

「○○商店街組合」という名前をもっていなくても、会費をとっていなくても、定期的に集まりがなくても、共通の利益があるというだけで利益集団です。

1-2. 利益団体

利益集団が組織になると、利益団体(organized interest; associational interest group; interest association)になります*2

先ほどの商店街の人たちが、「○○商店街組合」と団体を作ったり、商店街にお客を呼び込もうとしてみんなでアイディアを出し合って協力したりすると利益団体となります。

1-3. 圧力団体

利益団体が政党や行政に対して影響力を与えようとすると、圧力団体(pressure group)と呼ばれるようになります*3

「圧力」というと、強引に言うことを聞かせる、みたいな印象がありますが、政治学では、単に要望をしたりするだけでも、圧力団体と呼ぶことができます。なので、ほぼ全ての利益団体は圧力団体といえそうです。

そうは言っても、「圧力団体」という言葉にはネガティブな響きもあるので、中立に言いたいときに利益団体と呼ぶといった使い分けもあります。

2. 利益団体はどうしてできるの?主要理論を解説

利益団体はどうしてできるのでしょうか?代表的な理論を整理します。

2-1. トルーマンの社会要因論

トルーマン(David B. Truman)は、利益団体は社会の分化・多様化が進むと自然に生まれると主張しました。 *4

近代化で社会が複雑になって、人々の利害が細かく分かれていくと、自分たちの利益を守るための団体を作ろうという声が出てきます。ある団体ができると、対立する集団も個人で対抗するのは大変なので、団体を作って対抗します。こうして、いろんな利益団体が自然と生まれてくるということです。

この社会要因論は、細かくみると2つの内容(増殖仮説均衡化仮説)を含んでいます。

  • 増殖仮説(proliferation hypothesis):工業化や都市化でいろんな仕事ができ、人々の利益が多様化すると、人々は自分たちの利益を守るための団体を作ろうとするという考え
  • 均衡化仮説(equilibrium hypothesis):社会の力関係のバランスが崩れて、不利な立場の人々ができると、その不利な人たちは自分たちの利益を守ろうとして組織を作ろうとするという考え
    • 例1:資本家より不利な立場の労働者が集まって労働組合を作る
    • 例2:A集団が団体を作ったことに対抗して、B集団も団体を作る

2-2. オルソンのフリーライダー問題

トルーマンなどの伝統的な学者は、利益団体が自然とできると主張していたのですが、これに対して、オルソン(Mancur Olson)は、団体が勝手にできたりはしないよ、と主張しました。

オルソンは、もしみんなが自分の利益を第一に考えるとすると、団体に参加して面倒な役割を果たしたり、会費を払ったりするよりも、自分は何もしないで他の人が動いてくれるのを待ってればいいと考えるはずだとしました。 *5

商店街組合を例にとると、自分1人ぐらい組合に入らなくても、商店街の他の人たちがお客さんを呼ぶように活動してくれるだろうから、自分は組合に参加せずに、他の人たちが働いてくれるのを様子見しよう、と思う人が出てきます。それでも、商店街にお客さんが増えたら、この人のお店にもお客さんが増えることになりますね。

このように、自分は負担をせずに、他の人がやってくれる仕事のいいとこだけはもらおう、という人を「フリーライダー」と言います。

でも、自分が考えるようなことは、他の人も考えます。みんながフリーライダーになってしまったら、そもそも利益団体ができません。

これを解決する方法が2つあります。

  1. 法律などの仕組みで団体に強制的に加入するしくみを作る
  2. 団体に加入している人だけが得られるような利益(=選択的誘因)を作る

オルソンは、こういった仕組みによって利益団体ができると主張しました。

2-3. ソールズベリーの政治的企業家仮説

ソールズベリー(Robert H. Salisbury)は、利益団体ができるには、リーダーが必要だと主張しました。 *6

政治的企業家とは、利益団体ができるときに、他のメンバーよりもたくさん働くなど、多くの負担をする人のことです。

利益団体ができるときには、最初にこの政治的企業家が、「この団体に入ればこんなにいいことがあるよ」と言って、多くの人に団体に加入してもらいます。そうして、「団体に入ること」と「入ることで得すること(便益)」の交換が起こることで団体ができるとしました。

2-4. クラークとウィルソン―物質誘因と目的誘因

クラーク(Peter B. Clark)とウィルソン(James Q. Wilson)は、個人が団体に参加したいなと思う理由(=誘因)を次の3つに分類しました。 *7

  • 物質的誘因(material incentives):お金やものやサービスなど
  • 連帯的誘因(solidary incentives):人と関わる楽しみ、集団の一員であるという気持ちなど
  • 目的的誘因(purposive incentives):重要な目的のために貢献できているという気持ち

3. 利益集団の分類

では、利益団体ってどういうものがあるのでしょうか。一口に利益団体といってもいろんなものがあり、多くの政治学者が分類をしましたので、紹介します。

3-1. セクター団体と価値推進団体

利益団体はセクター団体価値推進団体の2つに分けるのが一般的とされます。 *8

  • セクター団体
    企業、業界、職能など特定セクターの経済的利益を守る団体。
    例:経団連、農協、医師会

  • 価値推進団体
    環境、平和、人権など社会的価値や理念を重視する団体。
    例:環境NGO、消費者団体

3-2. 市場団体と政策受益団体

オッフェ(Claus Offe)は、市場団体政策受益団体に分類しました。 *9

  • 市場団体
    財・サービス・労働を提供する人たち、財・サービス・労働を消費する人たちの団体
    セクター団体 + 消費者団体

  • 政策受益団体
    市場には直接関係しないけど、国家の政策に影響を受ける団体
    例:福祉団体、教育団体、行政関連団体など

3-3. 部分的集団と促進的集団

マッケンジー(R. T. Mckenzie)は、イギリスの利益団体を「部分的利益促進団体」、「特定目的促進団体」、「その他」の3つに分けました。 *10

  • 部分的利益促進団体(sectional groups)
    経済的利益や職業が同じ人たちの団体
    例:経営者団体、労働団体、農業団体、専門職団体など

  • 特定目的促進団体(promotional groups)
    同じ主義・主張を持っている人たちの団体
    刑務所改良を求める団体、死刑廃止を求める団体、動物愛護団体など

3-4. 特殊利益団体と公共利益団体

アメリカの政治学では、特殊利益団体公共利益団体の2つに分けるのが有力です。 *11

  • 特殊利益団体(special interest group)
    団体のメンバーの利益追求をする団体
    例:業界団体、労働団体、専門職団体など

  • 公共利益団体(public interest group)
    団体のメンバーだけでなく、その他大勢の人々も含めた利益を目指す団体
    例:環境団体、消費者団体、政治改革団体など

まとめ

今回の利益集団は、学生さんにはあまりなじみのない分野だったかもしれません。 ただ、政治というのは、政治家や官僚だけが動かしているのではなく、多くの集団がかかわってきているので、利益集団を理解することで、政治についての理解も深まります。


*1:久米郁男ほか『政治学〔補訂版〕』(有斐閣、2011年)p. 469。伊藤光利ほか『政治過程論』(有斐閣、2000年)p.167。辻中豊『利益集団 現代政治学叢書14』(東京大学出版会、1988年)pp. 14-17。

*2:久米ほかp. 470-471。伊藤ほかp. 167。辻中pp. 14-17。

*3:久米ほかp. 471。伊藤ほかpp. 167-168。辻中pp. 14-17。

*4:辻中pp. 44-46。伊藤ほかp. 171。

*5:伊藤ほかpp. 171-172。久米ほかpp. 471-472。辻中p. 46。

*6:伊藤ほかp. 172。辻中p. 46。久米ほかpp. 475-476。

*7:井上拓也「公共利益の実現における誘因の種類」(『茨城大学人文学部紀要 社会科学論集』 (56), 2013, pp. 11-25)p. 20。伊藤ほかp. 168。

*8:伊藤ほかp. 168。

*9:伊藤ほかpp.169-170。

*10:尾藤孝一「イギリスの圧力団体」(『稚内北星学園短期大学紀要』第5号, 1992, pp.31-47) https://wakhok.repo.nii.ac.jp/record/222/files/KJ00004470369.pdf (2025.12.28閲覧) pp. 35-39。

*11:井上拓也「アメリカ政治学における公共利益団体の概念の再検討」(茨城大学人文社会学部『人文社会科学論集』第4号, 2025, pp. 135-143) https://rose-ibadai.repo.nii.ac.jp/record/2001004/files/p.135-144%20%E4%BA%95%E4%B8%8A%E6%8B%93%E4%B9%9F%EF%BC%88%E7%A4%BE%E4%BC%9A%EF%BC%89.pdf (2025.12.28閲覧), pp. 135, 138, 139