プラトン『国家』第1巻

プラトンの代表作『国家』第1巻の概要と感想です。

 

1.導入

祭のために出かけた旅行先で、ソクラテスはケパロスという老人の家に招かれます。

はじめ、ソクラテスは老人ケパロスと、より良い生き方について話し合っていましたが、話題はやがて、正義とは何かという大きなテーマに移っていきます。ところが、議論が白熱しかけてきたのに、老人ケパロスは、神様にお供え物をするから、あとはうちの若いのと議論してくれ、と退出してしまいます。

 

2.ポレマルコスとの議論

ケパロスに次ぐ2人目の議論相手がポレマルコス。彼は『それぞれの人に借りているものを返すのが、正しいことだ』という詩人シモニデスの言葉を引用します。

 

この時代、詩人の語る言葉というのは相当の権威があったそうです。ましてや、詩人の中でも特に高名(だったらしい)シモニデスの言うことなら、間違っていることなどなかろう、というのが前提になります。

 

ポレマルコスはシモニデスの言葉を文字通りのみには解釈しません。ポレマルコスは議論を拡張し、敵に対して攻撃することも、借りを返すことの一つだと言うのです。たしかに少年マンガでも、敵に対して「借りは返させてもらうぞ」といったセリフ、見覚えありますね。

 

これに対しソクラテスは、いろいろとへ理屈を並べて反論しつつ、誰かに害をなす(攻撃する)ことは正義ではないと主張します。音楽家は音楽の技術を用いて他人の音楽の才能をなくすことはできないし、馬術家は馬術を用いて他人の馬術の才能をなくすことはできないだろ、それと同じように、正義を持つ人は正義によって、他人の正義を損なうことはできないんだよ、と言い出すのです。

少なくとも私には論理がいろいろと飛躍しすぎの感が否めないのですが、2400年も前(日本は縄文時代)なので。

 

3.トラシュマコスとの議論

このソクラテスのへ理屈を聞いて、いてもたってもいられず、怒りだしたのがトラシュマコスです。へ理屈ばっかり言ってんじゃねえ、といいつつ議論に巻き込まれてしまいます。

 

トラシュマコスは『正しいこととは、強い者の利益』だと主張します。どういうことでしょうか。

 

彼の主張はつまりこうです。各国において、支配層は自らの利益になることを法律として規定し、それこそが正しいことだと主張します。つまり、支配層にとって利益となることこそが、どこの国においても正しいこととなるのだ、ということです。

 

トラシュマコスの主張は、世の中を斜に構えて見ている人には共感できるのではないでしょうか。少なくとも私にとってはとても説得力があるように思えました。

 

これに対し、ソクラテスは、(1)支配者が誤って自らに不利益となる法律を作ってしまったときはどうなるんだ?とか、(2)医術は人間の身体のためのものだし、馬丁の技術は馬のためのものなんだから、政治の支配は支配者じゃなくて支配される国民のためなんだよ、という理屈にならないへ理屈でやり込めようとします。

 

面白いのは、トラシュマコスがソクラテスの反論を聞いても、やられた、という感じを抱いておらず、イライラだけが募っている点。結局、ソクラテスの反論は論理的に見えながらも、飛躍している点が多く、その点がトラシュマコスにも(ソクラテスに反論はできないものの)無意識に感じられたのではないでしょうか。ただソクラテスだけが一人、勝利の気分を味わっているように思えるのは私だけでしょうか。